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強い信仰心がある訳でもない私は、それに些細な違和感を感じつつも特に気に留めることもなく、社をくぐった。綺麗に整地された砂利、空を見上げれば視界の隅に茂る木々の緑が空の青をより遠く見せる。次々に水を吐く龍の蛇口、奥にそびえる小柄な賽銭箱を置かれたそれにはいかにもご利益がありそうだった。
(人はいないけど、よく手入れされてるなぁ。なんか……結構好きかも)
私はそんなことを思いながら賽銭箱の前に立ち、財布の中を見る。
「あれ?5円玉ないや……まぁ50円でいいかな。穴空いてるし、たくさん御利益ありそうだし?」
そんな独り言を言いながら、それを賽銭箱に投げる。ひと気が無いお陰だと思う。更に声に出して続ける。
「えいっ!神様!私に勇気を下さい!!」
ふわりと、弧を描く様に私の50円が賽銭箱に飛んでいく。私の願いを載せたそれが賽銭箱の中に吸い込まれ、音を立てる。
『キィーン!!』
「えぇ!?」
それは明らかに小銭が落ちる音では無い、聞き覚えのない甲高い音だった。
「……」
「……」
とはいえ、しばらく眺めても何が起きるわけでもなく、私は適当な理由でそれを納得させて家に帰ることにした。
「……賽銭箱の中に何か仕掛けでもあったのかな……変なの……」
そして、その『御利益』は翌日、あからさまな変化を私に見せるのだった。
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