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「あ!もしもし透?」
精一杯に強がっていつもの調子で話す。
「……あぁ、美帆……どうした?」
「ううん……ちょっと……何してるかなって……」
(やっぱり……だめだなぁ……だめだな私って……)
精一杯に強がって、精一杯に強がったつもりだったのに、声を聞いたら片頬を涙が伝い始める。考えていた言葉もあったはずなのに涙と一緒に出てしまったのか、何を言っていいかも分からない。
「あぁ、家に帰って着替えたとこ。美帆は?」
「……え?私は……うん、予定無かったからなんとなく前の公園……」
「暇なやつだな。勉強でもしたら?前の期末悲鳴あげてたじゃん」
「そ……それは透も一緒じゃない!!」
「ま、まぁな。でも俺の方が合計は高かったじゃん?」
「それ音楽、保健体育、美術とかの点を足すとじゃない!」
「か……勝ちは勝ちだろ!?」
「そ……そうだけど……」
他愛ない、いつもの会話が続く。どう切り出していいか分からない。この他愛ない時間をずっと続けてしまいたいと思いはじめる。
(……!)
ふと、砂場に残された砂の山に目がいく。
(あ……棒倒し!)
砂の山の真ん中に立った木の棒。懐かしい。家族ぐるみ、デパートのレストランから持ち帰ったお子様ランチの旗を使った棒倒し。そんなに面白いゲームでもないのに2人でずっと夢中になって、気付いたら暗くて地面の戦績表も見えなくて……どっちの勝ちか喧嘩した。そんな些細な思い出が蘇る。
(あぁ、棒倒しがテストになっただけじゃん。私たち何も変わってないなぁ)
(変わらないとなぁ、変わる為に電話したんだよね)
『あなた達は……相思相愛だったのにね……』
ふと、メガ姉の言葉が勇気をくれる。
「美帆?」
「え?」
「え?じゃないよ。急に黙ってどうしたんだ?」
今しかないと思った。不思議なほど、勇気も言葉も湧いてきた。
「透……」
「ん?」
いつもの調子で答える透に、思わず緊張感が抜ける。今なら言えると思った。そして会って言いたいとも。
「今から公園来て欲しい」
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