湿った導火線

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「よう!相変わらず歩くの遅いな」 「え……あ……当たり前でしょ!じょ……女子なんだから」 よく言えば爽やかに、悪く言えば能天気に透が言う。よく見れば電車はついさっきに出発したばかりで、多くの生徒はそれに乗ってしまうからこの時間はホームにも人影はなく、そのくせなぜかそこには電車を待つ透の姿があった。 (メガ姉、『次』って……この事ぉ!?) 「……」 「……」 お互い無言のままベンチに座って電車を待つ。いつからだろうか、透を男性として意識し始めたのは、そしてまともに話すという事がわからなくなってしまったのは、本当にいつだったのだろう。 無言のままベンチに座って十数分、結局電車が来るまでにも人は全く来なかった。 貸切のような電車に座り、それでも同じような時間だけが経つ。経つと思っていたその時だった。 「ローカル線だからってさ、そろそろ暖房くらい入れてもいいんじゃないか?」 確かに季節は秋、学校を出てから20分強も風に当たると少し肌寒い時期ではあると思う。 「!!そ……そうね」 彼の昔に比べて驚くほど広くなった肩が、揺れの大きい田舎道のリズムに合わせてふわりふわりと私の肩に触れていたからだろう。私の答えはどうにもぎこちない。 「……」 「……」
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