不思議な導火線

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カララララ、カララララ。時間は勝手に進んでいく。 カララララ、カララララ。数日前までのセミの鳴き声はどこにいったのか。セミたちの喧騒に変わって静けさを迎えた季節の路地に聞こえるのは枯葉の転がるそんな音だった。 普通電車しか止まらない田舎町、電車を降りてから10分。短いとも遠いとも言い難い家までの帰路を歩きながら私は明日こそはと気合いを入れる。 「よし、まずは話しかける。そして、デートに誘う。いまどき待ってるだけじゃダメだよね!!」 それはメガ姉から以前に受けたアドバイスそのままのセリフで、それを口にしてすでに二ヶ月が経つ。そう、そうなのだ。結局私はこういう女なのだ。口では頑張ると言ってもなかなか行動出来ない。恋愛に限ってじゃない。勉強だってそう、進路もそう。自分の本音を話すのが苦手で、すぐ楽な方に茶化して、後に回せる方へと逃げて逃げて、気づけば夏休みの前からもらっていたアドバイスを今も口に出すだけ。 家に帰って鞄を下ろす。制服を脱いで私服に着替える。実は私服はあまり好きじゃなかった。田舎のこの町にはあまり服のお店がない。選べる服が少ないからか、私はお世辞にもあまりおしゃれな服は持ってないし、それはこの前に、透にも言われてしまった。 (そういえばあれが原因でデートに誘い損ねたんだ……そうよ。運が悪くてタイミングを逃したから……)
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