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7年もしたら、美弥は28だ。
結婚を意識する年頃に引っ張り回して、”責任は取れません”では残酷なだけだ。
頭ではそうわかっていても、他の男とベッドにいる美弥を想像すれば、やっぱり冷静ではいられない。
「好きなんだろ? 人生を捧げてもいいと思えるほど。」
ハッとして光貴を見ると、穏やかに微笑んでいた。
咎めるでもなく、蔑むでもないその瞳に俺は無言で頷いた。
「いつから?」
「…女として意識するようになったのは彼女が中1の時。でも、あの子は生まれた時から俺の”特別”だったんだ。」
「もう…抱いたのか?」
その言葉にゾワッと鳥肌が立った。
もう何度も悪魔の誘惑が耳元で囁いていたから。
―― もういっそ抱いてしまえばいい。
―― おまえに溺れさせて、追いかけてくるように仕向けるんだ。
何度追い払っても戻ってくる声が、この薄暗いバーでも聞こえてきそうだった。
「抱いてない。この先も、抱くつもりはない。そんな泥沼に美弥を引きずり込みたくはない。美弥の幸せを願ってるんだ。」
自分に言い聞かせるように言った。
たとえ美弥が他の男に恋をして結婚して子どもを産んでも、祝福して応援して力になってやる。
美弥のそばにいたい。美弥を自分だけのものにしたい。そんな欲を抑え込んでも、彼女の幸せを願える男になる。
「つらいな。」
ボソッと呟いた光貴は俺の背中を押すように続けた。
「でも、それが正しいと俺も思う。」
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