エンジェル・フェイス

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光貴の店で飲んだのはエンジェル・フェイス1杯だけ。 最後の夜なんだから、出来るだけ長く美弥と過ごしたいと思った。 「ワルツを踊ろう。」 と誘った俺に、美弥は目を丸くした。 「無理! ワルツなんて踊ったことないもん。」 手をブンブンと横に振る美弥を見て、ため息をついた。 まったく。日本の学校教育はどうなっているんだ? ヒップホップを教えてワルツを教えないなんて。 「左手はここ。」 美弥に手取り足取り教えるのも楽しいからいいんだけど。 もっと言えば、ワルツじゃなくてチークダンスの方が良かったりもする。疲れてきたらそうしよう。 踊りながら2人で色々な話をした。 昔の思い出話や、これからのこと。 美弥の腰に手を添えて身体を寄せても、もう以前のように胸を押し付けてきたりはしない。 俺が海外赴任することを告げてから、美弥は俺を煽ることをしなくなった。 悪魔の真似をした天使が元の可愛い天使に戻ったかのように。 物足りない気もするが、これでいい。 叔父と姪は一線を越えてはならないんだ。 遠く離れていても、おまえのことを想っている。 ずっと、おまえだけを想い続ける。 これが俺の愛し方だから。 一生に一度だけの恋だから。
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