未来を継ぐ者

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早いもので、美弥の息子たちは中学1年と小学6年になった。 長男の恒は大叔父である俺にそっくりの容姿で、次男の京は美弥にそっくり。父である山内に似ているところは、美弥に対するスキンシップの多さだけだ。 結婚後も山内は日本全国を渡り歩くように転勤を繰り返した。当然のように、美弥と子どもたちも彼について回っていた。 それも去年までのことだ。 「お帰りなさい!」 俺が福岡の出張から帰宅すると、恒と京が玄関で出迎えてくれた。 「ただいま。留守中、変わりはなかったか?」 「大丈夫。定期テストもバッチリだったよ。」 「おじいさんも元気だよ。」 2人の報告に頷いて、頭を撫でてやる。 土産としてリクエストされていたご当地キャラのストラップをあげると、2人は喜んで子供部屋のある2階に上がって行った。 その様子に目を細めている父は、すっかり好々爺といった感じだ。 「帰りました。留守中、ありがとうございました。」 「ご苦労。久しぶりの逢瀬はどうだった?」 そんな風に尋ねた父も美弥を気にかけていることには変わりない。 「元気そうでほっとしました。順調だそうです。」 「そうか。…恒がな、数学で学年1位をとったぞ。総合で3位だ。」 「それは凄い。」 優秀なひ孫は父の自慢だが、会社の後継者にとは望んでいない。 でも、近頃俺の仕事に興味を持って色々聞いてくる子どもたちを見ていると、今は亡き母の思惑通りに事が運んでいるような気もする。  
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