第6章 追求

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車が湖に到着するとグレーの空は少し紺色の雲がかかってきた。次第にオレンジと紺のグラデーションに変わっていく。二人は遠くから聞こえる鳥の声と、虫の鳴き声を聞きながら湖のほとりにあるベンチに腰を下ろした。 コウダイはジーンズのポケットからipodを取り出すとアヤの耳に片方のイヤホンをつけた。サンサーンスの「白鳥」が聞こえる。 「綺麗ね」 「たまにこういう場所に来るものいいもんだな」 「ええ」 「今、白鳥が見えなかった?」 「そんなのいないわよ」 「そうだよな…」 時折魚が跳ね、水面に綺麗な模様ができる。 「あれ…魚だね。水の模様…綺麗だけど、俺たちに見せてくれているのかな…」 「そんなわけないじゃない」 「音楽もさ、全ての人が誰かに聴いてもらえるとは限らないんだよな。でも、誰かに聴いてもらいたいと思うことって大事なことだと思うんだ」 「だったら、この魚は、この綺麗な水面の模様を見てもらいたいって思ったってこと?そうだったら妖精か何かかも」 「妖精か…水の精みたいなことを言うな」 「それって…気になっていたんだけど、水の精って前から言ってなかった?」 「ああ、俺の祖父が言ってた話でさ。じいさんは有名な指揮者だったと前にも話しただろ?音楽を極めていたと言っていい。そのじいさんから俺は不思議な話を聞いたんだ。それが水の精の話ってわけ」 「お爺様がなんて?」 「親父は忙しくお袋も俺の相手をなかなかしてくれなかった。だからじいさんは良く俺に色々な話をしてくれた。そして俺に言ったんだ。お前も水の精に会えってね」 「どういうこと?」
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