第6章 追求

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「じいさんは時たま変なことを言ったからな、水の精は水の世界にいて、その世界へは音楽を極めるものだけが行くことができると話してくれた。その世界は限りない幸福で満たされ、永遠に最高の音楽に包まれていられるって…だから俺は小さい頃にチェロを極めたいと思った。じいさんの言葉の謎を知りたいと思ったんだ。もちろん、大人になってからも色々調べた。有名な昔のチェリストでカザミス・コーナースという人物がいるだろう?チェロの神様と言われた人物。彼の死には謎が多く残されているんだ。俺はかたっぱしから調べた。もちろん、その道の有識者から、科学者まであらゆる人物が彼の死について調べているけどね。知らないか?そのチェリストの死は演奏会の舞台だったらしいが、彼が突然倒れた後、白鳥の真っ白な羽が天井から降ってきたらしい。あとからあとから降って来て客席を埋め尽くす程だったとか。昔の書物にも色々残されているんだ。おもしろおかしくあとから伝説として物語が書かれたって言われているけどね」 「そのカザミス何とかって人は水の世界へ行ける人だったってこと?」 「まぁね。信じられないと一言で言ってしまえばおしまいだけど、じいさんが自宅で亡くなった時、どうやら白鳥が家にいたっていうんだ。羽が何枚も落ちていたらしい。だから俺はじいさんが言ってたことがそのチェリストの死の瞬間の謎と関係するのだと思ったんだ」コウダイは少し顔を紅潮させながら言った。 「だって、白い羽があったとしても、白鳥がいたとは限らないでしょ?アヒルかもしれないし…確率からいって、白い鳩か、ニワトリじゃない?」 「ニワトリだとしても、羽が散らばっていたら普通掃除してから演奏しないか?」 「演奏中に亡くなったのね?」 「ああ、楽器を持ったままね…」
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