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「あんたは──」
彼女は僕のことを“あんた”と呼ぶ。その投げやりな呼び方を、僕自身、けっこう気に入っていたりするのだが。
「あんたは、どう思う?……わたし、わがままかな?」
彼女ははっきりとした口調で、しかし不安を織り交ぜた声色で僕に尋ねた。
どう思うも何も、僕は彼女にサッカー部のマネージャーをやめてほしくなんかない。ずっとこのまま、彼女の傍にいたい、そう思っている。 しかし、彼女はそれを望んでいない。それは分かっている。
「君は──」
僕は彼女のことを“きみ”と呼ぶ。苗字だとよそよそしい気がするし、かといって下の名前で呼ぶのも気恥ずかしいからだ。
「君は、今までチームのために一所懸命やってくれた。だから……」
だから、もう君は……。
「もう君は、だれかのためじゃなくて、自分のために生きてもいいんじゃないかな。」
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