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「ボルシッチ、待つんだ話がある」
ベレッタを後方に構えながら、少しずつ距離を詰める。ボルシッチは、俺から一定の距離をはかりながら後退りを始めた。警戒しているな。
「話? 捕まった時にポリに全て話した筈だ。今更何を話せと言うんだ」
「その話しじゃない。お前の命にも関わることだ、だから協力して欲しい」
「司法取引か」ボルシッチは一瞬ピタリと止まった「出来るのか?」こちらに冷めた目を向ける。
だが、俺が司法取引をしようとするのは言わずとも汲み取ったようだ。話を理解することは可能なのは、島であった奴らとは違うな。味方に出来る見込みはある。
「出来るのか」の意味は二つ。一つは俺に出来るのか? 二つは、日本には司法取引出来る仕組みがないのに出来るのか?
「出来るさ、疑うなら内閣総理大臣に、お前の免責状を貰ってもいいんだ」
「俺はロシア国籍だが」
「違う、お前の国籍は俺たちチームかずかずだ。今、司法取引しても、終わったらまた捕まるか、森に引き渡すと疑っているだろう。なら、証人保護プログラムを付ける。そうすれば身の安全は保証される」
アメリカでは大抵の犯罪者は司法取引後のことを懸念するものが多い。日本は制度に馴染みがないので判らないが。
「なら何故銃を構えている?」
ボルシッチは俺のベレッタを指差した。
「司法取引する気なら、拳銃はいらないだろう。俺が逆らって襲いかかると思ったのか?」
「ああ、そうだな。分離したければくれてやる。もっと分離しがいのあるものはついてくれば沢山あるぞ」ベレッタをボルシッチに投げてよこした。
ボルシッチはすさまじい早さでパーツを分離するが「またつまらぬものを分離した」と組みたて直しこちらに放り投げた。
「分離しがいのあるものが沢山だと? ハラショー! 早く連れていけ」
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