11人が本棚に入れています
本棚に追加
スカイツリーにぐんぐん距離が近付いて来る。
ジグザグに張り巡らされた四角い鉄柱がはっきりと見えて来た。車のフロントに体重をかけると勢いよくジャンプ。ボルダリング歴3年の腕前を見せてやろうじゃないの。
私は横一文字になった鉄柱に腕を絡ませてしがみ付くと頂上を目指して、斜めの鉄柱に足を掛ける。
かず美カスタムは前輪が引っ掛かってしまったようだ。タイヤが今にもずれて落下しそうだけど、かず美さんは大丈夫?
「こ、こここ怖いよおおお、落ちるよおお」
「車内で暴れるんじゃない、カスタムが落ちるでしょうがっ!」
かず美さんはするっとぴんシートベルトをカチャカチャと外しながら、脱出を試みているが、緊急事態に免疫のないオタク歴3年の隆志はびびったままだ。体をカチカチ震わせている。カンッと何かがカスタムのフロントに落下してきた。いや。上から意図的に落下させたと言うか撃ったんだ。スナイパーライフルの弾。
素早く上を向くと、ライフルの銃口がこちらをむいている。黒の角刈り切れ長の白目、顔の傷。堀の深さとむさい顔立ちの男。あいつがゴルゴか。
「かず美さん、隆志、伏せといて!」
「判ってる。でも応戦するよ」
かず美さんは座ったままで、拳銃をダッシュボードから取りだし、ゴルゴに応戦をし始める。スナイパーライフルの弾丸がかず美さんの頭を掠めた。
「わおっ!」
「僕も応戦するんだなっ! かず子、僕のカスタムを持っていってくれ」
隆志は私にピンクの拳銃を投げてよこした。これで私もマイカスタムを一つゲット。
「かず子が握りやすいようにグリップを調整し、三点バーストも付けてある。マシンガンの連射。スナイパーの命中。マグナムの威力が出せるんだな、名付けてレッドヒップ2018!」
そのネーミングどうよ。
最初のコメントを投稿しよう!