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【1】
計画は完璧な筈だった。
伊勢神宮でお参りしてその後は夫婦岩で縁結びをして、伊勢地中海村の宿泊施設で一泊する三重県の婚前旅行。恋人の隆司とする予定。
伊勢地中海村はエキゾチックな雰囲気のスペインの町並みが並ぶ、リゾート気分が味わえると観光雑誌を見てココだと決めた。私は普段しないお洒落をしてデートに望む筈だったのに、出発と同時に事件が起きた。
それもデートで行く予定の三重県で。
「かずさん、大丈夫?」
事件現場である沖島と言う小さな島へ向かうボートの甲板で、私の仕事の相棒、白石かず美さんが訊ねて来た。
「めっちゃ凹んでる」
「だろうね。ちゃっちゃと終わらしていちゃこらしちゃいなよ」
かず美さんと私、石黒かず子は、二人でカズカズコンビと呼ばれている。かず美さんが凹んだ時は私が元気付け、私が凹んだ時にはかず美さんが勇気付けてくれる。二人が同時に凹むと、行きつけのバーでうさを晴らす。本庁では双子の姉妹みたいな関係だ。
「そうしたい、それにしても孤島で事件か。なんかきな臭いんだけど」
沖島には狂人の開放治療を行っている収容施設があって、それによってこれまで不治の病と言われた、サイコパスや所謂廚二病が完治するらしいんだけれど、どうやらそこの患者が失踪したとのことだった。
場所といい、現場といい、事件の内容といい、如何わしい臭いがするし、あんな場所に閉じ込められたら最悪だ。ボートが島に近付くに連れ、不安と緊張感が漂って来る。
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