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「長丁場になると捜査に影響出そうだから、食事済ませとく?」
かず美さんは、私にてこね寿司の丸い容器を手渡してくれた。
てこね寿司は三重県を代表する郷土料理で、漁師の即席弁当として、釣り上げたカツオをぶつ切りにして、ご飯と醤油を合わせたもの。蓋を開けるとおねぎがパラパラと掛かった、カツオの真っ赤な魚肉が見えてびっくらこ。
ご飯と一緒に箸で食べると、カツオの肉厚な触感と柔らかさが食べごたえ満点だ。
私のかずログは星五つ!
三重県にはてこね寿司の他にロールキャベツのような形をしためはり寿司や、かつお寿司、津市の津ぎょうざや、とんてき、僧兵鍋、亀山ラーメン、鳥羽のトバーガー。伊勢海老や蛤を焼いた伊勢海女体験などがある。
「本市さんもたまには気の効いたことしてくれるじゃない」
かず美さんはてこね寿司を食べながらそう言った。
本市さんは、私達の捜査を手伝ってくれるディティクティブ・プロデューサーの一人だ。捜査に必要な出費はどんぶり勘定で出してくれたりするけれど、それが原因で奥さんと喧嘩しているらしい。
「これ本市さんが?」
「後ろの網焼きや鍋料理もね、ついでにボートも買ってくれたよ」
今回は随分と出費を弾んだんだ。食事だけじゃなくて船も買うなんて。
私達の背後では、本市さんの友人のカメラマン荒木さんや、本市さんの教え子さん達が伊勢海女体験の網を早くも囲んでいる。が、本市さんの姿がない。
「本市さんは?」
「いないね。こう言う時にいの一番に食事にがっつく筈なんだけど、船酔いしたのかな?」
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