1・お薦めデートスポットは事件現場

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 船体が大きく左右に揺れて撮影どころじゃない!  何かに捕まってしのがないと振り落とされてしまうよっ! 僕は甲板の縁にしがみついて、海に落下すのを耐えたけど「わああああっ!」本市くんの体が横からはみ出した。何をしてるんだ君は。  「掴まれ本市くん!」  咄嗟に本市くんに手を伸ばすと、本市くんは手じゃなくて僕のカメラをつかんでしまう。  「く、首が痛いって本市くん、出来れば手を握って欲しいんだけど」  「そんな余裕はないわいねっ!」  カメラを握る余裕はあるのに。手を握る余裕はないってどういうことだよ。本市くんといると何時もこうなるんだ。  「大丈夫か本市君!」  船室から飛び出して来た清秀さんが手を伸ばして、本市くんを掴んだ。  「二人とも助かったわ。清少納言の随筆を生で体験した気分」  枕草子だったか、伊勢の海を船を渡ったというあれだね。日本最古のエッセイと言われている枕草子 にはそう書いてあったような。日本最古のラノベは源氏物語だけど、こちらは紫式部が書いたといわれている。 けどこの状況で、そんな冗談言えるってどういう神経しているんだよ。  「事件の捜査前に事件増やすな! どうして私が本市漁しなきゃならないのよ」  かずさんは本市くんの頭を持ってぐいと甲板まで引き揚げた。
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