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船体が大きく左右に揺れて撮影どころじゃない!
何かに捕まってしのがないと振り落とされてしまうよっ!
僕は甲板の縁にしがみついて、海に落下すのを耐えたけど「わああああっ!」本市くんの体が横からはみ出した。何をしてるんだ君は。
「掴まれ本市くん!」
咄嗟に本市くんに手を伸ばすと、本市くんは手じゃなくて僕のカメラをつかんでしまう。
「く、首が痛いって本市くん、出来れば手を握って欲しいんだけど」
「そんな余裕はないわいねっ!」
カメラを握る余裕はあるのに。手を握る余裕はないってどういうことだよ。本市くんといると何時もこうなるんだ。
「大丈夫か本市君!」
船室から飛び出して来た清秀さんが手を伸ばして、本市くんを掴んだ。
「二人とも助かったわ。清少納言の随筆を生で体験した気分」
枕草子だったか、伊勢の海を船を渡ったというあれだね。日本最古のエッセイと言われている枕草子
にはそう書いてあったような。日本最古のラノベは源氏物語だけど、こちらは紫式部が書いたといわれている。
けどこの状況で、そんな冗談言えるってどういう神経しているんだよ。
「事件の捜査前に事件増やすな! どうして私が本市漁しなきゃならないのよ」
かずさんは本市くんの頭を持ってぐいと甲板まで引き揚げた。
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