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例えば、ひとつ間違っただけで、皆川の心が離れてしまうのではないか、という不安がつきまとう。
今まで母から否定されてきた事が、完全に抜け切れるわけではなかった。
やはりまだ自身がゲイだという認識を持ててはいなかったし、母に対しての後ろめたさがある。
「淳さん、淳さんは一人で考えない方がいいと思います」
「えっ」
「何でも僕に相談してください。一人で答え出されたら、淋しいですよ。僕がいます。怖いなら一緒にいましょう。きっと、大丈夫ですよ」
「う・・ん」
淳が何に怯えているのか、皆川はきっと知りもしないだろう。淳さえも何に怯えているのか正確には分からない。
それでも、一緒にいるという言葉に一時でも安堵する。
きっと、これから何回も不安に思う事があって、上手く言葉にできなくてもこうやって励まされていくのだろう。
「ありがとう」
淳は笑顔で頷いた。
皆川も笑みで返す。
「じゃぁ、二人で暮らすにはもっと広い部屋がいいですよね」
「えっ!」
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