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それまでの日常が別のものに変わってしまうとき、それは恐怖だろうか。それとも幸福なのだろうか。
いつも恐れていた。想像出来ない世界に。
自分からバリケードを貼り、そこがサンクチュアリだと信じてやまなかった。
実際に未知だと思われる境界を超えてみると、意外に今までと変わらないと分かる。
ただ恐怖や幸福の質が変わっただけ。
自分が傷つくことに恐れていたことが、失う怖さに変わる。何気ない幸せが胸を締め付けられる幸福感に変わる。
淳は目の前を歩く頭ひとつ分大きい背中を追いかけた。
行き交う人の中で、気が付くと目で追ってしまう。
見ているだけで、幸せで、これは夢なのかと何度も思った。
淳が皆川に想いを伝えた時から3ヶ月。
季節はあっというまに夏を超え、9月に入ったのにまだ蒸し暑い。
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