やさしい恋をして

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「吉岡さん?」  先を行っていた皆川と距離が空いてしまったらしい。すぐ後ろをついてきていない事に気づいて、皆川が立ち止まって振り向く。  思わずそんな仕草も格好いいな、と淳は目を瞬かせた。 「はぐれちゃいますよ」  追いついた淳に皆川はそう言って、淳の右手を握った。 「えっ」  そのまま歩き出してしまう皆川に戸惑う。  土曜日の昼間で一通りは多い。それなのに男二人が手を握りあって歩いていたら、変に思われてしまう。  淳は慌てて、皆川を呼び止めた。 「皆川さん、ちょっと」 「何ですか?」  歩みは止めずに、皆川は淳を見た。 「あの、手・・・」 「吉岡さん、僕よりも手が小さいですね」  クスリと笑う。 「そうですか?・・・・って違いますよ!」 「いいじゃないですか、恋人って感じで。吉岡さんは嫌いですか?」 「嫌いとかそういう問題ではなくてっ」  恥ずかしいのだ。淳が言いたい事を絶対に皆川は分かっている。淳は途中で気づいた。  ずるい。  嫌いか?と聞かれたら、嫌いだとは言わない事を分かっている。
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