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未来が腕にくっついてくる度、歩きづらいと思っていた。
未来の事を好きじゃなかった、と言われたのはそういう事を悟られていたのだ。
「吉岡さん」
皆川は笑いながら振り向いて、淳の手を握ってきた。
また、淳は数歩遅れて歩いていたらしい。
何度か手を繋ぎ直して、皆川の済むアパートに向かった。
2階の角で、新築のような新しさがあった。
「お邪魔します」
遠慮がちに中に入ると、皆川は「適当に座っていて下さい」と別の部屋に消える。
意外に部屋にはものが溢れていた。観葉植物や壁にかけられた帽子、チェストの上にはコロンが綺麗に並べられている。
二人がけのソファはゆったりしていて、皆川のこだわりが見えた。
落ち着かないままソファに腰をかけると、皆川が二つのグラスとワインを持ってくる。
「お待たせしました」
テレビのスイッチをいれ、手際よくグラスにワインを注いだ。
「はい、どうぞ」
白のスパークリングワインで、気泡がシュワシュワと音をたてる。
「ありがとうございます」
一口含むと、程よい酸味が喉を潤す。
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