過去の遺物

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「私に、出来るでしょうか?」 小さくか弱い声で独り言のように呟いた問いに、クロウは瞬きを1度して、チラリとナルを窺い、ゆっくりとリョクシを見た。 「出来る出来ないじゃねぇ……やりたいんだろ?リョクシじゃなきゃやれねぇんだ、その為の[お言葉]だからな」 真っ直ぐに目を見てくるクロウにリョクシは再び体を強張らせる。 が、リョクシには到底何も出来そうにないと、不安が襲う。 視線を逸らして顔を曇らせるリョクシに、クロウは深く息を吐いて頭をガシガシと掻いた。 「『炎が()き放ち ()が開かれる時 (まこと)の姿降りて 光』ってーのは、恐らくそのまま受け入れればいい」 ボソリボソリと小声で話すクロウに目を上げると、クロウはニヤリと笑って続けた。 「俺の万透眼(ばんとうがん)は神の言葉に通じない。(かい)せなかったんだ……だけど、神は面倒臭い謎なぞは出さないもんだ。[水の瞳]は両目揃ってから力を発揮するんじゃねぇのか?今はまだ片目だけだろ、その為には[炎]ってのが関わってくるんだろーけど……ま、安心しろ、神は[死]を促さねぇ。これ、ナルにはナイショな。余計な事すると『仕事にない!』って怒るから」 クロウは唇に人差し指を当てて少しキツい表情で釘を挿すように囁いた。 呆けた様で見詰めるリョクシの前で1つ息を吐き、そのまま目を閉じる。 「明日はアスパ村に着く……寝とけ」 欠伸をして、眠るために壁に体を預けると直ぐに寝てしまう。 二人が寝息をたてる中、焚き火は薪を灰にしていく。 リョクシは手元の薪を火にくべて、じっと踊る火を見詰め続けた。 〈炎が解き放ち……瞳が開かれる……〉 リョクシは震えることもなく、隙間風を感じることもなく、ただ座って赤く燃え続ける火を見続けた。
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