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────「愚か者どもが」
低くくぐもった声が冷たい壁に反響する。
真っ赤に燃える爬虫類特有の瞳が、暗い穴の中を睨み付けた。
湿った硬い岩の上から怒りを露にする者を恐れて頭を垂れ、微動だにしない者たちが闇に群を成す。
「我の獲物を奪う者……我の前に差し出せ───[鍵]を連れて来い」
岩の上で頭部に1本の角を生やした者は眼下に並び怯える者たちを蔑み、怒号を発し、瞳の片隅を過る蛾に向けてしなる尾を振った。
蛾は半分に裂かれて湿り気のある凍る壁に打ち付けられる。
「我の邪魔はさせぬ……繰り返さぬ……2度と……」
両頬にまで広がる口を歪め、赤いざらついた長い舌で唇を舐めた。
雪山から闇夜に影が放たれ、獣の唸り声が轟いた。
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