旅人は遠方より来たる

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二人に関する情報は殆ど有りませんでした。 光と共に現れ、光と共に消え、長い髪を靡かせ、一人は剣を手にして舞い、一人は風を纏って踊るように賊の中で笑う……互いの二の腕を合わせて並ぶと一対の蝶となる赤黒い痣がある。 薄い布地を腰に巻いただけの姿で、何も語らず、何も獲らず、ただ力有る勢力種族のみを絶やして忽然と消える。 捜しても見付かる事なく時は流れ、民の意向通り王宮は建ち、その周りに人が移り住み街が出来、地で一番大きな都と成りました。 それが王都・クローバーです。 民の切なる願いを受け、地と玉座を守護するために綺風人族は王宮に留まるようになりました。 今、あなたや他の民が【王】と呼び親しみを抱いていらっしゃる方は、【王】ではなく【地】の守護者、綺風人族族長・レディ様の事です」 静かに語られた昔語りが止まると、異国を彷徨っていた意識は淡い光に導かれて現状に戻される。 引き込まれていた旅人は目の前で瞬きもせず開かれた黄緑色の瞳からゆっくりと視線を外してその場にへたり込んだ。 「で……では、そのレディ様は……」 「残念ですが、現在王宮にはいらっしゃいません」 「もう3年くらいになるんじゃねぇか?」 「長いよね……こんなに長く離れてるの珍しいよ」 旅人の呟きに3人の声が順に答える。 クロウは長椅子に腰掛けて平台に肘を立てたまま果実を1つ食べ終え、その傍に突っ立つナルはいつの間にかみすぼらしいコートを脱いで肩を出した綺麗なシャツの襟を整えている最中だった。 「ど、何処にいらっしゃるのですか?!何処に行けば会えるのですか?!」 焦燥を露にして声を吐き出す旅人に、3人は視線を集めた。 じっと見詰めてくる其々の色をした澄んだ瞳にすがる事しか出来ず、旅人は唇を噛む。
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