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麻編みの煤汚れたロングコートで全身を覆い、コートに付いたフードを目深に被って俯き加減で土埃を上げながら急ぎ足で通りを行く。
王都クローバーを目指す旅人は、たった一人で背中に荷を隠して土壁の間を汗だくになって進んでいた。
前記した通り、当然の如く旅人を狙って突き刺さっているであろう視線に気付く事もなく、ただ無言で歩く姿は何処か思い詰めているようで、コートに覆われた体は小さく、まだ少年であると見られた。
何処から来たのか?
何かを成すためだろうと、盗賊たちには関係もなく、通りを行く者は獲物。
あっ!と気付いた時には5人の男たちに囲まれ、道を遮られてしまっていた。
「よぉ……重そうだな」
「そんなモノ持ってちゃ疲れんだろ」
「置いてけよー……その方が楽になるぜ?」
「ケガしたくねぇだろ?」
「置いてけよー……ふへへへ……」
気味の悪い下品な薄笑い声と共に間合いを詰めてくる大柄な賊たちに旅人は直ぐに反応出来ず体を強張らせた。
「はっ……あっ……あのっ……!!」
「な?大人しく……置いてけ」
5人に詰め寄られて見下ろされるその鋭い眼光に、怯んで小さな体がガタガタと震える。
見回す顔ぶれは何れも意地悪く、醜く歪んで見える。
まともに返す声も出せず、背負う荷の肩紐をコート越しに汗ばむ手で強く握り締めた。
「ほらよっ!」
「うっ……わぁぁぁっ!!」
突如後ろからコートを捲し上げられ、勢いにつられて前倒しになってよろめき悲鳴を上げる。
転ぶ旅人を嘲笑いながら賊はその背中から荷を奪い捕った。
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