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クロウとナルは扉の前で踵を返し、リアローを見詰めた。
「君が一緒に来なきゃアウルーは見付けられないでしょ?社の道は2人が一緒じゃないと開かないって言ったじゃない」
ナルが呆れた様で息を吐きつつリアローの腕を掴んだ。
「お前の本体を連れ出す」
クロウはそう断言して扉を開け通路を伺う。
夜明け前の薄暗く静まり返ったその場所には、無音という音が漂っていた。
「……ボクの本体はあの部屋でコウテンの配下の者に見張られています」
「あの人形のような体?」
鏡のように磨かれた通路を足音を鳴らさないように気を配り、目を凝らしながら2階の客室を目指す。
リアローの息を潜めた呟きにナルが問い掛けると、リアローはコクリと頷いて答えた。
「ボクのボクを残してボクだけで身体を維持してきたので、あのような人形の姿になってしまっているのです。ボクもこちらに飛んでいるから、今、身体は脱け殻の状態……」
「だったら2つとも抱えて来なきゃいけねぇって事だな?」
「はい」
リアローの困惑した表情に気も向けず、目の前に迫る客室の扉へと素早く静かに移動した。
よほど無頓着なのか、それとも余裕綽々で警戒する必要もないのか、扉の前に警備はいない。
リアローはどうやって中に入るのか不可思議に思いながら2人を伺っていた。
するとクロウと目配せをしたナルが左手を木製の扉へ伸ばし触れて1本の棒に変化させる。
暗い部屋内が露になり、地響きのような息遣いを耳にして、クロウは棒と壁の間をそろりと忍びつつ侵入して行った。
土神の本体はリビングのソファーにそのまま並んで横倒れていて、その近くで配下の男が1人爆睡していた。
クロウは難なく2体を肩に担ぎ、物音を立てないように部屋を出る。
その後ナルは扉を元に戻し、3人は急いで王宮の外に駆けた。
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