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さー、階段を昇りきったぞ。鍵を開けるぞ、ああー我が家だ、いつも掃除していなくてごめんよ、汚いままでごめんよ、女がたびたび来ているにも関わらず、こんなにむさ苦しい場所にしてしまってごめんよ、またいつか空き缶や、エロ雑誌を片付けて、綺麗にしてやるからな……コンドームだって使用済みのやつはきちんとティシュに包んで捨てるからな、醤油のシミだって、いつかテレビショッピングの何とかクリーナーで洗ってやるからな、待ってろよ……俺の愛しい風呂場よ、プカプカ浮かぶアヒルちゃんよ……と、ドアに鍵を差した瞬間……。
「祐二?開いてるわよー」
俺は一瞬にして目の前が真っ暗になった。何ということだ、玄関にはしっかり玲子のヒールが並べられているではないか。しかも派手な銀色の靴だ。この充血した目で凝視するにはキラキラ光りすぎている……何て派手な女なのだろう……そりゃー昔は可愛かった。今から十年前の玲子はパンティだって白しか履けないわなんて言っていた清楚な女だった……だが、今ではどうだ。高いヒールに真っ赤な口紅、マニュキュアまでしている淫乱黒子のある女だ。だが、変わらないのは玲子のナイスバディと肌の艶だろう……変わらないというよりは美しさにますます磨きがかかっているような気もしないでもないのだが……。台所に一歩足を踏み入れると、元カノの玲子はレースのカーテンの向こう側で「遅かったじゃなーい」と色っぽい声を出し、コタツから出てその場でいきなり全裸になった。俺はその場の状況をまだ何も飲み込めず、「早くー」と指でパンティを回しながら、もう片方の手で手招きしている女に返事さえも出来ずにいた。いや、これは悪夢だ。きっと悪夢に違いない……。ここまで辿りついたのも奇跡に近いというのに……。
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