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いろんな想いが悠羅の頭を駆け巡ってーー
「あ」
気づけば見えない鎖のような呪縛は解け、持っていた短刀が手から離れた。
「…よりちかさまぁ…」
悠羅の目に、みるみる涙が溜まった。
「あれぇ?おかしいな~、そんな半端な術じゃないはずなんだけどな?」
飄々と惺寛が首を傾げる。
頼爾は悠羅の肩を掴み、惺寛と悠羅の間に立った。
悠羅と、背を合わせる形で。
「…半端な絆じゃないってことだ、この生臭坊主」
「言ってくれるね」
笑顔のまま、惺寛の目に怒りが宿る。
ゆっくりと懐に手を入れ、短刀を取り出す。
それと同時に、珀露が惺寛の前に降り立った。
「……僕が、誰かの言うことを聞くと思う?」
にやりと笑うと、紅い瞳が煌めいた。
「あ、にうえぇぇえーーー!!」
怒濤の勢いで走り込む信爾。
頼爾、信爾、珀露を目の前にして、さすがの惺寛もたじろいだ。
「…役者は揃ったようだが……どうする?」
嫌味ったらしく頼爾が首を傾げる。
苦々しく顔を歪める惺寛。
「……今日は、仕切り直し…」
良いかけて、声が止まった。惺寛の目の先には、真火が立っていた。
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