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真火は、珍しく燃えるような真っ直ぐな瞳をして惺寛を見つめていた。
いつもと違ったその様子に、惺寛は躊躇った。
「あ、真火さま…?いかがなされましたか?」
ははは、と笑ったその声は、空々しく消えていく。
真火は、返事をせずにそのまま惺寛の目の前へと歩みを進める。
「ま、真火さん…?」
その場にいた皆が、戸惑っている。
けれど真火は、強い意思をした瞳でじっと惺寛を見つめて、そしてーー
すうっとひとつ、息を大きく吸った。
「惺寛さま!」
「はっ、はいっ!?」
「いけません!こんなことをしては!」
「へ」
真火はそこで、きゅっと唇を結んだ。
「…みんな、貴方を信じていたんです。貴方は、妖の気持ちがわかるから。
私も…ですけど、みんな信じて、ここの辺りの妖は、皆穏やかでいられたのに」
「貴方が退治した妖は、妖のなかでも悪さをしていたひとばかり。
良いひとがとばっちりに遭わないよう、裏で逃がしてくれていたでしょ…?」
真火の言葉に、惺寛はばつが悪そうに眉間に皺を寄せた。
「だから頼爾さまも、あんな態度を…?」
悠羅が思い至ったように頼爾を見つめた。
「…こいつの狙いが、いまいちわからなかったからな。
ただ、妖を取り込んでなにか企んでるとしたら、厄介だから、様子を見ていたんだ」
「……わかってたんだ」
惺寛はため息をついた。
その瞳に、覇気はなかった。
「偽物は、本物になれないって」
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