風波

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「は……ははっ」 頬に伝う涙を拭いながら、惺寛は笑った。 胸に広がる温かさに、涙が溢れて止まらなかった。 ーーもう、苦しまなくていいんだ。 長年つかえていた苦しみが、ほどけていく。 満たされるような、それでいて空虚のような、不思議な感覚に笑いが止まらなかった。 ずっとここに居たくて、逃げ出したい。 相反する気持ちが心地良い。 「…これが……心か…」 ふぅ、と落ち着いたときに口から出たのは、そんな言葉だった。 頼爾の大きな手が、惺寛の肩をさすった。 「貴方が、妖であるのに自分を見失わないのは、信爾さまのお陰なのですね…?」 「……そうだな」 頼爾は優しく笑った。 「……初めて見ました、そんな顔」 ふふ、と笑って大きく息を吸った。 そして、頼爾、信爾、真火、悠羅、順に顔を見た。 皆、優しい笑みをたたえている。 惺寛はゆっくりと深く、お辞儀をした。
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