風波

27/27
前へ
/79ページ
次へ
「惺寛さま」 隣に座る真火が、静かに声を出した。 「……ずっと、ここにいてくださいますか?」 「え……わ、私なぞが、いても良いのか…」 自然と声が震えた。 あんなことをしてしまったのだ。このままいていいはずがない。 けれど真火の目は優しく、力強かった。 「もし、あちらに居場所がないのでしたら…ここなら、皆さん、惺寛さまを必要としています」 「……そ、うだろうか…」 「そうですよ!」 屈託なく笑う真火に気圧されて、惺寛は笑った。 「…敵わないな…。…わかりました、少しなら…」 真火は本当に嬉しそうに笑った。 この笑顔のためだけでも、いる理由はあるのかもしれない。 そう、素直に思えた。 笛の音と、舞。 夢のように美しく、幸せな場所。 ここにいられるなら、少しの間、身を寄せようか…… 惺寛は清々しい気持ちで、星空を見上げたーー                         完
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加