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「……暇ですね」
ぱきん、と甘栗の殻を割る信爾。
隣にはおいしそうに甘栗を頬張る真火の姿があった。
「なんです、急に。
でも、そうですね…最近は平和ですねぇ」
ほくほくの甘栗を頬張る姿は、とても幸せそうだ。
「もちろん、平和がなによりだけどね」
言って、信爾はお茶をすすった。
「んー…でも、信爾さまがそう言うってことは…なにかあるんでしょうかねぇ?」
「いやいやっ、そんな…縁起でもない!このまま、なにも起こらないのが一番ですよっ…」
「この隙に、祝言でもあげちゃいましょうか」
「えっ!?」
「え」
二人同時に動きが止まった。
「なーんちゃって」
場を乱すように現れたのは、惺寛だ。
「惺寛さま!な、なんてことを」
「お二人見てると、もどかしくてつい」
まったく悪びれない惺寛の言葉に、信爾は恥ずかしいやら慌てるやらで忙しい。
一方の真火はというと、変わらず甘栗を食べながら少し考えて、
「いいかもしれませんね」
と言った。
その瞬間、どこからかひらひらと、白いものが舞った。
「花びら…?」
見るとそれは雪のようだった。
「珍しい…もう、春なのに」
「吉兆か、凶兆か……」
ぽつりと呟く惺寛に、信爾の視線は季節外れの雪から離せなくなっていた。
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