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「い、いいかもしれませんね…って、聞こえたんですよ」
真剣な表情で、小声で言う信爾に、大きなため息が返ってきた。
「そりゃ…当たり前ですよ」
「えっ!?そ、そうですか!?」
信爾が慌てて言うと、相手はどん!と畳の床を拳で叩いた。
「当たり前です、信爾さま!いつまで待たせる気なんですか!!」
「ひぇっ」
「……そう怒ってやるな、悠羅」
悠羅の握った拳を手に取り、優しく撫でる頼爾に、悠羅の表情が和らぐ。
「不器用な弟なんだ。…まぁ、真火殿の気持ちを鑑みれば、拳を握る気持ちも理解は出来るが」
「えっ、あ、兄上まで!」
慌てる信爾だったが、ひとつ大きなため息を吐くと、がっくりと項垂れた。
「……私だって、分かってはいるんですよ…。ただ、いまもまた、大事な時間で…
ふ、夫婦となると、その、変わってしまうんじゃないかって……いや、やはりこれは逃げ、ですね…」
はぁ、とまた大きなため息を吐く信爾。悠羅は小刻みに震えている。
「だぁったら!!」
だん、と今度は足が出た。
「いま、ここで!そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!!
早く真火さんとこ、行って!!!」
「!!!はっ、はいっ!!!」
声と同時に畳に足を滑らせながら、信爾はばたばたと出ていった。
「まったく…仕方のない弟だな…」
頼爾はそう言いながら、悠羅の足を撫で、そっと口づけをした。
「よ、頼爾さま…」
「なぁ悠羅、私は信爾と真火のようにはっきりとした幸せをあげることは出来ないが…
一緒にいてくれるか?」
上目遣いでそう言われ、絶句する悠羅。
「……っ、は、はい…」
やっとのことでそう言うと、そのまま後ろにゆっくりと押し倒される。
「……いい子だ」
しゅる、と帯が外され、少しずつ白い肌が露になっていく。
悠羅の瞳は、恥ずかしさと嬉しさで潤んでいたーー
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