石榴の実

9/18
前へ
/79ページ
次へ
頼爾が寝所に歩を進める間、一言二言、声が聞こえた気がした。 けれど、思っていたような歓喜の声は聞こえてこない。 不思議に思って襖の奥を覗き込むと、責められた子どものような、無垢な瞳と目があった。 「……よ、頼爾さま…」 戸惑う声の真火。 様子がおかしい。 「…信爾か…?」 我ながらおかしな問いだ。 けれどそのぐらい、目の前の信爾には違和感を覚えた。 「あ、あの」 信爾の声は、怯えていた。 その顔を見て、頼爾は絶句した。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加