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大きく見つめるは鳶色の瞳。一点の曇りもない、美しい瞳。
「え、えええーー!?」
真っ先に声を発したのは悠羅だった。
そうしてまじまじと信爾を見つめる。
「……かっ、かわいい…!!」
「わかります!!とても可愛らしいですよね!?」
絞り出した悠羅の言葉に、真火が頬を赤らめて同調した。
きゃいきゃいと、黄色い歓声が上がる中、信爾はおとなしく真火の腕に抱かれている。
そうして、ふと頼爾を見ると、にこりと笑った。
「きゃーー!!!かわいい!もう…言葉にならない!かわいい!!」
幼子の笑顔ひとつでここまで盛り上がるとは。
頼爾はふっ、と微笑んだ。
状況はまったく好転していない。どころか、さらに悪くなっているのだが、この幼い信爾は間違いなく癒やしを与えてくれている。
そして
同時にふと、信爾の笑顔を見て、何かを思い出しそうな気がした。
けれどいくらそれを手繰ろうとしても、もう二度とは戻ってこない感覚。
頼爾はふぅとため息をつき、東の空を見遣った。
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