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その日から、信爾がどこへ行くにも真火か悠羅が付いて回ることとなった。
というより、そうしないと信爾は行く先々で小さな悪戯を繰り返すのだ。
襖もすでに、何ヶ所かに小さな穴が開けられ、畳の端は何本かい草が出てきている。
大人しくしているかと思うと、楽しく悪さをしている為、真火も悠羅も気が気ではなかった。
けれどなぜか二人とも、どことなく楽しげだ。
「頼爾さま、こちらに信さまは来ていませんか?」
悠羅がそっと襖を開けると、頼爾のあぐらの上で信爾がすやすやと眠っていた。
悠羅は、あっと口に手をあて、小声で真火を呼んだ。
「あら…なんて……かわいらしい」
ふふ、と二人は花がほころぶように笑った。
「童子など…煩わしいだけかと思ったが、なるほど…この笑顔が見れるならば、童子も悪くないな」
目を伏せ、信爾の汗ばんだ前髪を撫でた。
しかし、それと同時に、紫香がまだ戻っていないことを頼爾は思い出していた。
膝に乗って眠る信爾には、記憶は全くない。このまま時間が経つと、元の信爾の記憶は戻るのだろうか。
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