石榴の実

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悠羅がすぐに発ち、頼爾がまた休もうと身体を横にしたとき。 どこからともなく声がした。 それはか細い、女の歌声だった。 ゆっくりと身を起こし、足音を立てずに声のする方へと向かった。 そこは、真火と信爾が休む寝所だった。 襖は薄く開いており、中から青白い光が漏れている。 歌声はゆらゆらと、波のよう。 部屋に足を踏み入れると、つぷん、と水の中に入ったような感覚がした。 (しまった…!) 気づいたときには歌声もくぐもり、視界もぼやけていく。 (!?真火は…!?) 見渡したが、真火の姿はどこにもない。 そうしているうちに、足元の畳から襖、ついには外の景色までが一気に変わっていく。 「」 そこは、見慣れない景色だった。 けれどどこかで見覚えのあるような、不確かな記憶。 (いや、ここは……) 気づくか、気づかないか、その瞬きのうちに、頼爾の視界はぐるりと回った。 身体が言うことを聞かず、尻からぺたんと転んでしまった。 (!?) その頼爾の視界に映ったのは、ふっくらとした小さな足。 そして、驚くほど視野が狭く、低い。
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