8人が本棚に入れています
本棚に追加
悠羅がすぐに発ち、頼爾がまた休もうと身体を横にしたとき。
どこからともなく声がした。
それはか細い、女の歌声だった。
ゆっくりと身を起こし、足音を立てずに声のする方へと向かった。
そこは、真火と信爾が休む寝所だった。
襖は薄く開いており、中から青白い光が漏れている。
歌声はゆらゆらと、波のよう。
部屋に足を踏み入れると、つぷん、と水の中に入ったような感覚がした。
(しまった…!)
気づいたときには歌声もくぐもり、視界もぼやけていく。
(!?真火は…!?)
見渡したが、真火の姿はどこにもない。
そうしているうちに、足元の畳から襖、ついには外の景色までが一気に変わっていく。
「」
そこは、見慣れない景色だった。
けれどどこかで見覚えのあるような、不確かな記憶。
(いや、ここは……)
気づくか、気づかないか、その瞬きのうちに、頼爾の視界はぐるりと回った。
身体が言うことを聞かず、尻からぺたんと転んでしまった。
(!?)
その頼爾の視界に映ったのは、ふっくらとした小さな足。
そして、驚くほど視野が狭く、低い。
最初のコメントを投稿しよう!