石榴の実

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(さて、どうしたものか…) 考えあぐねては見たものの、思ったより思念が強く、抗えない。 (…というより) この輝き、暖かさ、優しさ…… その全てが心地よく、抗えそうにない。 (しばらくこうしていようか) 信爾の意識下であれば、そう困ることにもならないだろう。 頼爾はそう考え、この小さな身体に身を任せた。 多少の不便はあれど、ふわふわとして気持ちがよい。 大人たちは、小さな赤子の小さな動きも見逃さず、嬉しそうに微笑んだり慌てたりと忙しそうだ。 けれどどの顔も皆、幸せそうでーー (私の幼い頃にはなかった表情だろうな) ふとそう思う。 状況もかなり違うから、仕方のないこと…、そうはわかっていても、物悲しさが胸をざわつかせた。
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