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「そんな事でええの? なんとも張り合いが無いのぅ」
さっきと同じように、お爺さんがごにょごにょと呟いて杖をひと振りする。気温が徐々に上昇しているのがわかる。お爺さんの姿もだんだんと消えていく。最後にお爺さんが何か言っている。
「あ、でも、女の子と出会う可能性があるというのは、あるかないかで言えばある、というだけで、確率としては決して高くない、というか、期待はしない方が良い。いやむしろ、ほとんど無理かも」
「え! ちょっ、待っ――」
お爺さんは、消えてしまった。僕は――
僕は、何してたんだっけ。あ、焼きそばだ、焼きそば。
その夏、嫌だ嫌だと思いながらも、なぜか僕は焼きそばを作り続けた。そして、夏が終わった。女の子との出会いは、なかった。
バイト代は手元に残ったけど、青春の日々を無駄になくした気がするのは、なぜだろう。
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