夏なんてなければいいのに

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太陽に照らされた稲穂はまるで 黄金が輝きを放つがごとくキラキラと揺れていた あとふたつきもすれば収穫・・・ 白鷺2羽があいさつをするかのように飛んできたが あいさつをすることもなくマツの前を飛び去って行った白鷺だった そして前方から真っ黒に日焼けした高校生たちが 話ながらマツの横を通りすぎた 笑顔から白い歯が印象的な爽やかな光景だった そんな高校生たちのたわいもない会話が断片的に聞こえた 「あ~あもう夏も終わりか」 「いつまでも夏ならいいのにな」とつぶやいていた 男の子達の後ろ姿が遠く離れたときマツは急ぎ足で歩きだした 畦道(あぜみち)の外れにある 大きなクスノキの前にきたマツは耳を傾けた 「ナツナンテナクナレバイイノニ・ナツナンテ・・・」と クスノキの根本の辺りから聞こえてきた 近づいてみると確かに「夏なんてなくなればいいのに」と聞こえている そこには小さな小さな男の子がいた それは小さな小さな男の子のつぶやきだった 小さな小さな男の子は身の丈3センチ 男の子はクスノキの小枝を集めてきては井桁を組んでいた そして何やら拾い集めては井桁に放り込んでいた 身の丈3センチの小さな小さな男の子は顔を
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