解雇通告は始まりの言葉

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送信。 すると二分とたたずメールが帰ってくる。 慰めのメールだろう、そう思いメールフォルダを開き俺は絶句した。 「別れましょう」 俺が口をぽっかり開けているともう一通。 半ば放心状態でメールを開くとそこには 「あなたは貯金もあったし性格に難があるわけじゃなかったけど仕事のないニートと遺書にいたら未来がないの。私も30台だし、分かって頂戴。」 俺は携帯を放り投げた。 なんかもう悲しくもないんだな。大事なもの一気に二つも失うと。 形容しがたい感情が心の中を支配する。それは会社が俺を解雇した怒りでも、彼女に捨てられた悲しみでもなく、ただ曇り、見通しのない空の様な…そんな感情だった。 …………… 俺はバックを取って会社を飛び出し飲み屋街へと繰り出した。 うだる暑さの中、ガード下で見つけた屋台でおでんをくらう。 暑い、だが旨い。むしろそれ以外わからない。 漫画とかなら屋台のおっちゃんが声をかけてきて「にいちゃんこんな時間からどうした??酒一本おごってやるよ!!」なんて言ってくれるのかもしれないがこのおっちゃんは新聞を読みふけり追加で注文すると小声で「…あいよ」としか言わない。 非情だなぁ世の中ってもんは…こうでもならなきゃ気付かなかったのか俺は… 悲しくなってくるぜ… そのあとも俺は飲み明かした。 もうそれはそれは浴びるように… いつの間にか意識がなくなり気がつけば新宿駅の中央線ホームのベンチで横になっていた。 まあまだ夜九時、人の流れは早いがこっちは東京方面。 反対の八王子方面のホームは見てるとめまいがしてくる。 なんでこんなことになったのかもよくわからない。 だが今は夏だ。きっとこの暑さで会社のお偉方は頭おかしくしたんだろうし彼女もイライラしてたんだろう… なんて馬鹿馬鹿しいことを考える。 今更そんなこと考えたって何かが変わるわけでもないのにな、笑えてくるぜ… ガキの頃は夏が楽しくてしょうがなかった。夏になっただけでなにかウキウキしたもんだ。 だが俺は今流動する社会の片隅、世界一の利用者人数を誇る天下の新宿駅のベンチで横になっている。 無様だな(笑) ホントにさ… 「「夏なんて滅びれば(なくなれば)いいのに…」」 「「えっ??」」
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