解雇通告は始まりの言葉

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それからは少しばたばたしていた。東京駅へ出向き寝台券と乗車券を買い、彼女の手を引き9番線へと走る。 21時57分、発車三分前となったその列車には「サンライズ」の文字が刻まれている。 俺たちが乗り込むと待っていたかのように扉が閉まり、夜の帳が降りた東京の街並みを疾走してゆく。 その光はまるで心の闇を洗い流すかのように表れては過ぎていく。 空いてる部屋を急いでリザーブしたので彼女とはミニラウンジで落ち合った。 ソフトドリンクを買い、二人で乾杯する。 列車は横浜、小田原、熱海と少しずつあの町から離れてゆく。 彼女とは色んな事を話した。 子供の頃の話から会社であった面白い話。 俺が残業時間にトイレに行って大きいのしたときに突然消灯時間になってトイレの電気まで落ちて慌てて尻にトイレットペーパーを挟んで飛び出した話はとても笑ってくれた。 何故だろうか。会社の話をしてもつらくならない。むしろ卒業した学校の思い出話をするかのように、楽しい。 次第に外の光も少なくなり、列車は速度を上げる。 もっと、もっと早く。 だけどこの時間が長く続いてほしい。 そんな矛盾が心の中で交錯していた。 不思議な話だ。どん底の酔っ払いとどん底のOLの二人が人が何万と行きかう駅で出会い、今こうして西へと向かっている。 運命があるとするならこのことを指すんだろうか そんな風に男にありがちな馬鹿みたいな考えをしていたら彼女が「ふあ…」とあくびをした。 時刻は二時を回っている。 じゃあそろそろ部屋に戻ろうか、と席を立つ。 「「おやすみなさい」」 と声をかけあい部屋に戻る。 その言葉に少しこそばゆさを感じながら、曲面ガラスに映る夜空を眺め眠りについた。
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