解雇通告は始まりの言葉

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四季はうつろぎ今は夏。 彼女と出会い旅を始めたあの日から、一年と少しが立った。 彼女に最後に行きたい場所を尋ねると「出雲に行きたい」と言った。 なぜ出雲なのかはわからないが、彼女の行きたい場所に行くことにした。 一日かけて列車を乗り継ぎ出雲に降り立った。 過去にも一回来たことがある。 出雲そばがおいしかったっけ。 せっかくだ、前回食べられなかったしじみの味噌汁を食べよう。 なんて、完全に旅行脳になった頭をフル回転させている俺であった。 「ねえ、聞いてる?」 彼女がうへへうへへする俺を見て怪訝そうに尋ねる。 決して悪意があるわけじゃない。 よだれが垂れそうになっていたのだ。 すっかり出来上がったな、俺よ… …一年前の俺が見たらなんて思うだろうか… 「ほら、ハンカチ使って…全く…また食べ物の事でも考えてたんでしょ」 む…当たっている… 彼女は俺に対して敬語を使うことはなくなり、あたりもフランクになっていた。 俺はふと気になって聞いてみた。 「なあ、どうしてあの時ついてきてくれたんだ?」 少し怖かった。 詐欺でもいいと考えては居るが、もしそうだったらやはり少しはこたえる。 彼女が口を開く。 「私、ね。あの時凄くうれしかったんだ。全部終わったと思ってたから。そしてあの町から離れられて自分の知らない世界を見に行けるって考えたらたまらなくウキウキして。」 俺はその言葉を聞いてほっとする。 「そ、そっか、よか「あと!」…た、え?」 「私を理解してくれる人がいたから…」 「…それは俺も同じだ…」 「最初は少し怖かった、でもね」 「私がケガした時パニックになるくらい心配してくれたり私のペースに合わせてくれたり、私はそれがとっても、とーってもうれしかった!!」 自惚れかもしれない。 だけど 「それ、つまり…」 聞かずにはいられなかった。 「ねえ、知ってる?出雲大社って縁結びの神様がいるんだって…」 「その…わたしと」 胸の上をさまよう手を俺はぎゅっとつかみ叫ぶ。 「俺と結婚してください!!!」 俺はあの日と同じようにわき目もふらず叫ぶ。
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