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「出発よ」
音の割れた無線機から、女は更に闇深くへと誘う。
腕を組んで女の計器確認を待機していた髭面男も、FDのミッションを1速へシフトする。
女も固いシフトノブを左手の平に当て、スープラの重たい車体をゆっくりと転がし、発進させた。
規模の小さい田舎の住宅地。
片側一車線の細い幹線道路で、50km/hの巡航を始める。
築50年もなる、古い校舎の中学校を通過。
夕方には早閉まいするガソリンスタンド前を横目に流し、三角ロータリー交差点を右折。
ここから、二人の長旅が始まる。
ー・・・二人の身に、これから何が起こるのかも知らずに。
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