第1章

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 そう思って俺はそいつのことを無視してキッチンに行って朝飯の用意をする。 「今日は何にするか。……ん? げっ」  何気なく後ろを見れば、あの人形が棚から降りようとして失敗し、そのまま床にベチャッと伏せている姿が目に入り、ぎょっとする。  おいおい、まさかあの人形、自力で動けるのか?  動く人形なんてますます気味が悪いが、このままにしておくのもまた気分が悪いような気がして、俺は渋々人形の元まで戻り、胴体を掴み、そのままリビングのテーブルの上に置く。  それからようやく朝飯の支度を終え、皿をテーブルに乗せて自分も椅子に座る。 「いただきます」  じゃがいもと茄子の入った味噌汁を啜り、ご飯を口に含む。咀嚼するたびにふっくらとした米の食感とふわっとした甘味が広がる。うん、今日はいい感じに炊けてる。
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