第1章

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 さすがに人間相手にやるみたいに手の平全体で撫でるとこいつが潰れちまうから、人差し指でそっと小さな頭を撫でてやる。  嬉しそうに笑う顔を見て、何だか俺まで嬉しさが込み上げた。  あれから数日が過ぎた。  こいつはまだ、うちにいる。  変な人形が家にいるということ以外は、俺の生活も何も変わらない。けど、変わったこともある。  人形に「ユキ」という名前を付けた。由来はもちろん、雪のように真っ白な髪の色から。  それから服もあげた。女の子向けの人形用の服を。フリルのついた水色のワンピースだ。買いに行くのは死にそうになるほど恥ずかしかったけど、服をあげたときのユキの嬉しそうな顔を見たら、何かもう、いいかなって。  そして、ユキはあっという間に言葉を覚えて、今では最初のたどたどしさもなくなった。
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