2章:出会い

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典子は肩を叩かれた方を振り返った。 そこには、 小顔で背の高い、男の人がいた。 「失礼ですが、 お客様。 本日の神崎様のパーティ にご参加でしょうか」 男は典子に向かって話しかけ、 丁寧にほほえんだ。 典子は一瞬ドキッとしたが、 とりつくろい、うなづいた。 「そうなんです、、 けど、ともだち、、友人がちょっと遅れていて、、 その一緒に参加する予定だったんですけど、、 仕事が長引いてるみたいで、、」 典子は言葉をつないだ。 典子がおたおたと言葉をつむぐのを その男性は迷子の少女を見守るように、そっと微笑んで、聞いていた。 その微笑みに、 典子はますます、落ち着かなくなってしまった。 男は事情を聞いて、 典子に提案した。 「よろしければ、 お店の中でお待ちになりませんか」 男はまたもそっと微笑んで、 お店のほうを指さした。 典子は、こくん、とうなづいた。 男は、 「よかった。 ではご案内します」 と言って、 典子をお店の中に導いた。 典子の胸はまだ ドキドキしていた。 なんだろう、 このドキドキは。 突然、見知らぬ土地で、 見知らぬ男性に話しかけられて、興奮しているのか。 典子は男のすらっと伸びた背中を見て また、ドキッとした。 あんな風に男の人に 話しかけられるのは、久しぶりだった。 まるで、、、 恋人のような、誘っているかのような、、 柔らかい言葉。 典子はどきどきした心を抑えて、 お店の中に入った。 通された部屋は、 椅子と荷物置きしかなかった。 センスの良いアンティーク調の部屋だった。 典子は部屋をきょろきょろと見回した。 隅っこにある椅子に腰かけた。 (続く)
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