第1章

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scene:革命  新聞の一面には暗殺の二文字が目立ち、テレビのニュースも件の現場近くを映し出している。ラジオもネットも、殆どのメディアは世界を震撼させるほどの事件の報道を挙って伝えていた。渦中の国の政府は無関係と無実を訴える一方で、暗に異世界の亜人が起こした事だと発表している。関係諸国と連携し、事件の全貌を究明し、且つ実行犯を含む関係者を捕まえると告げていた。が、現状、公式な宣言を発表するだけが精一杯なのは明らかだった。  国連の安全保障理事会の常任理事国の一角も担うロシアは、先のアシクジによる中東、及び東欧、南欧で規模を拡大するテロ組織への攻撃に対して否定的な態度を見せていた。アメリカ、イギリス、フランスは、自らの手を下さずともテロ組織を壊滅に追いやっている状況は、誰であろうとも在り難いものだった。国内で扉に関連した内政の不安が見られ、また異世界への進出を企てていた都合、無駄に戦力を導入する必要性がなくなったからだ。対して中国はアシクジらの侵攻を歓迎するような態度は見せなかったものの、否定的な言動もなく、静観する立場だった。  が、ロシアだけは東欧諸国との関係もあり、露骨とは言わないまでも、状況を静観出来ない状況にあった。勿論、既存の資源をめぐる既得権益や歴史的な背景の他、21世紀から始まった、かつての共産圏を主導した強いロシアになろうという政治的な方針――昔の冷戦のような対立関係を言い表したものではなく、ユーラシアでの新たな経済圏の設立などを説き、リーダーシップを発揮しようとした結果の誤謬だ――の影響も大きかったと言える。既に同スローガンを掲げた大統領は代わり、今は協調路線を打ち出しているが、同スローガンを掲げた前大統領の一番の支持者でもあったロシアの不動産王シャムシュロヴァの暗殺は極めてセンセーショナルな出来事だった。
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