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目の前で起こった出来事を無視して信号で止まっていると、さっきの風紀委員がそのままの勢いで戻って来て向こう側から叫んできた。
「オレの挨拶を無視すんな!」
「朝からうるさいぞ、二メッタ」
「オマエが静か過ぎるだけだっての」
ケタケタと笑う風紀委員の名前は『ゴスティード・ニメッタ』。聞いた話だと、何処ぞの海運会社の社長令嬢(つまり一人称が『オレ』の女)らしいが……全然信じられないというのが、感想だ。
リボンタイは結ばずに制服にかけているだけで、スカートは自転車に乗っているとその奥が見えかねない程短く、特徴的な白髪のポニーテールは腰に届くくらいに長い。肌は白く透き通っていて、服を除くと身体で黒いのは瞳くらいか。ちなみに顔つきはその性格とは裏腹に、いかにもな女の子の顔をしている。――ギャップというやつだろうか。
「人のコトをジロジロ見てんじゃねーよヘンタイ」
「誰が変態だ」
そんな風に返事をして、青になった横断歩道を渡りニメッタと合流し、並走にはならないように俺が前を走り学校を目指す(俺が後ろだと目のやり場に困る)。
それにしても、今日は風紀委員の仕事はなかったはずだが……何故ニメッタはこんな時間に登校しているのだろうか。
訊いてみたら、一学期のスタートという事もあるので、抜き打ちで持ち物検査を実施するとの事。校門にかけてある魔法によって、あらかた弾けるのだが、一部の魔法が上手い連中はすり抜けられるので、人によるチェックをやろうという訳だ。流石に透明と隠蔽の魔法を同時にかけたとしても、手で触ればそれは気付ける。特に風紀委員には気付ける人間が多い(気付けるから風紀委員になったとも言える)ので、まあ大丈夫だろう。
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