4 連絡

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「前のとき、お感じになった……」 「いや、気づきもしない」 「それならば染み込んでいないでしょう」 「そういう理屈か」 「で、暮らす場所以外のことは……」 「仕事には通っているようだ。今回の件は会社には伝わらなかったのかな」 「事件にはしませんでしたから」 「それは瑠衣子さんが目覚めた後のことだろう」 「本人が警察に電話をしたし、すぐに身柄を確保されたから、警察がそれ以上動かなかったんですよ」 「刑事小説とは大違いだな」 「企業モノの小説だって、尾瀬さんの目から見れば単なるフィクションでしょ」 「多くはそうだな」 「他には何かありますか」 「瑠衣子さんの娘さんの旦那さん――壮太さん――と数回会ったらしい」 「それは娘にも聞いています。継続して会っていたんですね」 「何か企んでいるのか」 「わたしと直接会いたくないから代理人にしたいのと違いますか」 「壮太さん、お宅には……」 「今のところ、現れていません」 「交渉が上手くいってないか」 「わかりませんけど、そんなところでしょう。他には……」 「動きとしてはない。ホテルの所在地とか、壮太さんと会った喫茶店とかは教えられる。後でメールしよう」 「お願いします」 「ところで瑠衣子さんの方はどうなんだ。ぼくも情報が欲しい」 「傷が癒えている最中ですよ」 「まだ痛むのか」 「痛さはそうでもありませんが、傷跡が……」 「今の技術なら、回復後に直せるだろう」 「いえ、この傷はわたしの緋文字(ひもんじ)」
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