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それなのに。
今、俺は、スクランブル交差点を見下ろすカフェで、途方に暮れている。
目の前には、同じく、固まってしまった希恵。
「ええと、鷹松君。胸の辺りに巻きついている、その……」
カフェの店員が、二人分のコーヒーを運んできた。
落ち着き払って、テーブルにソーサーを配すると、優雅に一礼して立ち去った。
二人の間の、微妙な空気は感じたろうに、一切、気配に現さなかった。
俺の方を、ちらりと見ることさえ、しなかった。
さすが、接客のプロだ。
「まずは、コーヒーでも飲もうか」
二人で固まっていても仕方がない。
震える声で俺は言った。
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