決戦前日

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 いつの間にかセミよりも、ヒグラシの金属をこすったような軋んだ鳴き声のほうが大きくなっていた。  監督の古瀬を中心に、半円を描くように蓮森(はすもり)高校野球部一同が並ぶ中、夏奈(かな)は、明日行われる決勝戦のメンバー発表を聞いていた。  順次発表されていく明日行われる決勝戦のスタメン。  彼が呼ばれるのは、そろそろだろうか。夏奈は細い喉を鳴らし、古瀬の冷たい声を待った。 「8番セカンド――」  ピクンと心臓が跳ねた。誰が呼ばれるのかわかっていても、どうしても反応してしまう。 「城崎」 「はい」と溌剌とした声が聞こえ、坊主頭の部員へ思わず視線を滑らせると、一瞬目があった。  夏奈は慌てて顔をそむけ、練習用ユニフォームのズボンを誰にもわからないように握った。 「決勝は、晋城館(しんじょうかん)が相手だが、打順を組み替えたことからわかるように、勝ちにいく」  はい、と合わせるでもなく、部員全員の声が揃う。  蓮森高校にとっては初の決勝進出らしいが、古瀬の口調は淡々としていてあくまでも普段どおりだった。
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